ふくろうは夜行性。
みんなが起きてる昼間は寝てる。
みんなが寝てる夜に起きてる。
だから、ひとりぼっち。
maam:「ふーちゃ、不機嫌そうね。すねてるの?」
ふーちゃ:「ぼくは、誰とも話したことはないし、
誰とも遊んだことがない。
だから、一人で生きてるんだ…。」
maam:「淋しくないの?」
ふーちゃ:「淋しくなんかないよ。
誰かとけんかして、いやな思いをしなくていいし、
何より自由でいられる。」
maam:「ふぅーん、そうなの…。」
ある日の夜のことでした。
ふーちゃは草むらの物音に気づきます。
ふーちゃ:「誰だい?」
マウロ:「うわー! びっくりした。
君こそ誰だい?」
ふーちゃ:(なんだ、ねずみか…。)
「僕はふーちゃ。ふくろうのふーちゃ。」
マウロ:(うわぁー、ふーちゃだ。
やっぱり、みんなが言ってたとおり。
不機嫌そうで、気難しそう。
どうしよう。)
「あー、君がふくろうのふーちゃ。
僕はマウロ。はじめまして。」
物音の正体がわかって安心したふーちゃは、
その丸い体をひるがえし、その場を立ち去りかけました。
でも、なぜかその動きがピタッと止まったかと思うと、
マウロの方に向き直って、言いました。
ふーちゃ:「こんな夜中に何をしているんだい?」
マウロ:「明日、ぶぅとんとんの家でチーズパーティーなんだ。
だから、ぶぅとんとんの家は、今夜、チーズでいっぱい!なんだよ。」
こんな夜中にマウロがここにいる理由がわかって安心したふーちゃは、
その丸い体をひるがえし、その場を立ち去りかけました。
マウロ:「そうだ! あのー、お願いがあるんだけどさ。」
ふーちゃは、驚いて目がきょろきょろしています。
生まれて以来、誰かにお願いごとをされたことなんて…。
マウロ:「ぶぅとんとんの家は、
チーズパーティーの時は、なぜか、警戒が厳重なんだよ。
だから、家の中になかなか入れないんだ。
あのね、あのね。
君なら煙突から中に入って、玄関の鍵を開けられるよね。」
ふーちゃ:(そんなことなら、たやすい話だけど、
それは、僕に、チーズ泥棒の一味になれってことかい?)
頭の中では、こんなことを考えていたふーちゃでしたが、
思わず出た言葉は…。
ふーちゃ:「で、ぶぅとんとんの家はどこだい?」
二人は歩き出しました。
いえ、ひとりは飛んでいましたが…。
そして、最初はよそよそしかった二人だけれど、
いつの間にか、お話をいっぱい、いっぱい、していました。
マウロにチーズをとられて空になった皿をかかえて立っているぶぅとんとん
の話を聞いた時は、
ふーちゃは、おかしくて、おかしくて、飛べなくなるほどでした。
ふーちゃが笑ったのは、これがはじめてだったかも…。
そして、ぶぅとんとんの家の前に来ました。
でも、ちょっと様子が変なんです。
明かりがついています。
ふーちゃ:「マウロ、残念だね。
ぶぅとんとんが起きてるようだね。
忍び込むのは無理だね。」
マウロ:「そんなことないよ。大丈夫だよ!」
ふーちゃ:「え、どうして?」
ふーちゃは、わけが分からなくて、
また、目をきょろきょろして、マウロのほうを見ています。
その時です。家の扉が開きました。
みんな:「チーズパーティーにようこそ、ふーちゃ!!」
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お仕事でデザインしたふくろうを、糸をかえて編んでみました。
もともとは、ハマナカさんのラブボニー、ピッコロとティノを使用したデザイン。
少し前のことになります。
あの時は、なかなか「これだ!」という、ふくろうのイメージが浮かばずに、
生みの苦しみを味わっていたんですが…。
ある日、とある方からのお電話を切った後、
何気なく、手元にあった紙に落書きしていると、
そこに、「ふーちゃ」がいました。
電話の主の優しい声に乗って、「ふーちゃ」は現れました。
でも、その落書きの「ふーちゃ」は、なぜか、不機嫌そうな顔をしていて、
その時に、この「ふーちゃ」の物語も一緒に生まれました。
「優しさ」と「不機嫌」が結びついた想像の世界というか…。
「ふーちゃ」は、すねてるわけではなく、
ただ、夜行性なので、みんなとすれ違ってただけ、なんですけど、ね。
夜更かししてパーティを開いてくれた森のみんなの優しさにふれて、
ふーちゃの機嫌も少しはよくなるかしら…?
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ちなみに、「ラブボニー×ティノ」「ピッコロ×ティノ」の親子バージョンは、
手芸パックにしていただけました。こちらです。
『招福ふくろうの親子』という、めでたいタイトルがついています(笑)
不機嫌そうなふーちゃにも素敵な時間が訪れたようですし、福を招く効果アリかも?!
今回も、糸の雰囲気の変化が楽しい、2本取りです。
制作の段階では、ほかにも、違う色合わせを楽しませていただきました。
↓こんな感じ(笑)
こちらでもご紹介いただいていますが、
ブティック社さん発行の『ほっこり可愛いあみぐるみ』という本にも載せてもらっています。
ラブボニー×ティノ、ピッコロ×ティノ、いろんな組み合わせができると思いますので、
ぜひ、自由に楽しんで編んでみてくださいね。